いつともなくどこへともなく

2001年から続けている、生と死と言葉とのかかわりについて考えたことの備忘録です。

施行まであと7日:住基ネットを考える その1

02/07/29(月)22:23:36
8月5日に、日本国民全員に11桁の番号が振られる。この日から、『住民基本台帳ネットワーク』(住基ネット)の運用が開始されるのだ。わたしとしては、「民主主義」という多数決原理の政治思想を無前提に根拠としてこの"背番号システム"に反対する気はないが、自分が独立して存在していたいというごくシンプルな理由、というか感覚から、このような"隷属的なシステム"に、「否」と言いたい。施行まであと7日と迫ったいま、まったく遅まきながらと言うほかないが、本稿で住基ネットについて整理してみるのも有意義かと思う。

"隷属的な"という言い方にはもちろん、異論があるだろう。「メディアのみなさんが不安視されるような、"国民を監視する"とかそんな大それたシステムではないんですよ」−−わたしが実際に話を聞いた総務省住基ネット担当者は、そのような意味のことを言って笑ったものだ。彼はもちろん、わたしを煙に巻こうとしたのではなかったのだと思う。彼は本当にそう思っていたのだろう。

この種のシステムの本当の威力、危険について考えるためには、ある程度、具体的な細部まで見てみる必要がある。管理する側は、スローガンとしてはどうとでも言いうるというだけでなく、権力が及ぼす多くの危険は、統治する政府自身も意図しないほころびから発するものだからだ。

この時期になって、不十分とはいえ、住基ネットについてはさまざまな形でメディアに取り上げられている。その要点は、ごく大雑把に言って、以下のようなことだ。

  • 住基ネット=従来、各地方自治体ごとに管理されてきた住民票データを、全国規模で構築されたネットワークで接続したもの。
  • 住基ネットの目玉は、住民票データ(基本4情報:住所、氏名、性別、生年月日)を本人確認情報として、各行政機関からも参照できるという点。
  • 国民は、住基カード('03年発行予定)などを利用して、行政サービスを受ける。サービスの内容は、住所地以外の自治体で住民票の交付が可能になる、行政機関での登録や申請時の住民票提出が不要になる、など。
  • 国民全員に11桁の番号を振る。
  • '99年の『改正住民基本台帳法』に基づいて施行される。
  • システムの設計・運用は、指定情報機関である政府の外郭団体『財団法人 地方自治情報センター』が行なう。
  • 基本思想は、政府の『e-Japan戦略』
(この項、続く)

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