いつともなくどこへともなく

2001年から続けている、生と死と言葉とのかかわりについて考えたことの備忘録です。

たったひとりで歩む友の姿を

02/07/25(木)11:07:26
晴れのち雨

20年来の友人Sと落ち合う。
同じ東京に住んでいて、顔をあわせるのは、実に1年半振りくらいである。新宿の某テックス・メックス料理屋を目指すが、水曜日にもかかわらず長蛇の列。みんなめざといな。

Sは音楽家。インデペンデント系のプロデューサーをしている。アンビエントというんだろうか、ちょっと変った音楽が好きな、いわゆる通の間では熱烈な支持を得ている。

10年以上勤めていたバイト先をつい先日やめて、当分は製作中のCDに集中して、それから、今後どうやって食っていくかを思案中とのこと。その手のことで悩む年頃ということなのか。Sもわたしも今年34歳になった。

久しぶりに見るSの顔をまじまじと見た。脂の抜けたいい顔をしていた。「友遠方より来る・・・」と言うが、Sはいつも、遠くにいる友だった。自分の仕事の価値を最終的に決めてくれるのは、きっと彼のような友の目なのだ。

もちろん、友情がいつも幸福な結末を迎えるとは限らない。太宰と井伏は(これは師弟関係だが)? カフカとブロート、フローベールとマキシム・デュ・カン……なるほど、友情は時として苦悩の源泉ともなりうる。

しかし、昨夜、小雨の降り始めた新宿を並んで歩いていたSとわたしは、毎日遊んだりケンカしたりしていた少年時代そのままの姿だったと思う。幸福だった。道なき道を、ともに、たったひとりで歩む友の姿を、間近に感じながら。